Craftsman来て見て体験演者

ガラス工芸の楽しさを
一人でも多くの人に伝えたい
鳥海 友理
ガラス工芸作家

鳥海 友理

東京郊外の緑も豊かな埼玉県蓮田市に、文京区在住のガラス工芸作家・鳥海友理さんが創作活動を行っている工房があります。時には江戸時代から続く伝統的な技も交えながら、ガラス工芸の様々な技法を駆使してNijiirosketchの名で創作する鳥海さんの世界は、美しく繊細で鮮やかな彩り。硬質な素材でありながらも優しさや温かみが感じられます。光の通過と反射で自在に変化する、ガラス工芸の美しさに魅了されました。


ガラス工芸の

様々な技法を駆使したものづくり

 

鳥海さんは、いろんなガラス工芸の技法でものづくりをしている。サンドブラストというガラスの表面に砂を吹き付けて彫刻をするのもそのひとつで、江戸硝子や透明な器、鏡、ウエルカムボードなどを制作している。また、バーナーを使って、ガラスのアクセサリーやアロマネックレスを作ったり、電気炉を使って、ヒュージングという技法でアクセサリーや小皿などを作っている。

「サンドブラストは、イラストを作成し、トレーシングペーパーに印刷して、それを濾光器で下からフィルムに照射して露光し、洗い出してマスキングフィルムを作ります。素材にフィルムを貼り付け砂を吹き付けて彫った後フィルムを剥がすと、透明部分とすりガラス部分がコントラストになって模様が浮かび上がります」

 

イラストを露光させたフィルム 

 

サンドブラスト機にガラスを入れて、研磨材を吹き付けながら削る。

色鮮やかな

ガラスのアクセサリー

 

鳥海さんが制作しているアクセサリーに、アロマオイルや香水を入れて香りを楽しめるアロマネックレスという人気のアイテムがある。もともとこんなのがあったらなと自分用に作ったものだったが、友達に売ってと頼まれて販売したところ、これが大好評。リピーターが増えて、お花柄がいいとか虹色がいいとか、お客様の要望をきいていくうちにどんどんデザインバリエーションが増えていったそうだ。小さな穴からアロマを入れる専用のガラススポイトも自作という、女性作家ならではの気遣いもおしゃれ。ただしその完成には、並々ならぬ試行錯誤が必要だったとか。

バーナーワークは、1000℃前後のバーナーの炎でガラス棒を溶かしながら成形する技法。

「自分で作ったステンレスの吹き竿にガラス棒を巻き付けて、バーナーで溶かして吹きながら作るのですが、特にこのハート型は本当に苦戦して、山のような失敗作ができました。冷めすぎると割れるし、穴を空けるタイミングも難しい。温度を見ながら形を整えるのは、吹きガラスの経験が活きたのだ」と語る。こうして、色も形もこの世に同じものが2つとない自分だけのオリジナルアクセサリーが生み出されていく。

 

人気のアロマネックレス。ハート型は、ハートの片側が空洞になっていて、そこにアロマオイルを入れる

素材となるガラス棒

昔から続く技法も

伝承していきたい

電気炉(キルン)を使ってガラスを加熱・成形することをキルンワークというが、鳥海さんは、ガラス片を重ねて電気炉で加熱し、融着させるフュージングという技法も巧みに操る。例えば、波の絵柄が爽やかな帯留めは、サンドブラストで模様を彫り、電気炉を使って溶かしていった作品。温めすぎると溶けすぎるので、その加減をみながら焼成するのが難しい。凹凸によって波の影が水面に映り込む表現が自分でも気に入っているという。

鳥海さんが最近注目しているのが、結霜ガラス。明治期に西洋のガラス加工技術とともに輸入された技法で、照明や窓ガラスに使われ、大正〜昭和初期には、洋風建築やモダンな住宅の建具に広く利用されたという。

「ガラスにサンドブラストをかけて、その上に膠を塗ります。乾かしてから、電気炉で熱を低温で加えていくと、ガラスの表面がくっつきながら剥がれていくので、こんな鳥の羽のような、シダ植物のような模様になるのが面白い。今は、ほとんど作れる職人さんはいないので、この装飾技術を作品に取り入れて、昔の技法を伝えていけたらなと思っていいます」

熱を加えると、パリン、パリンという高い音がして膠が剥がれていく様が、なんとも儚く風情を感じるそうだ。

 

吹きガラスの帯留

結霜ガラスの作品

 

地方の産地との

コラボレーション

鳥海さんが、現在力を入れているのが、福島県楢葉町の藍染め会とコラボして制作しているガラスと藍を掛け合わせて作った作品。楢葉町の藍は、徳島のような濃い色ではないが、それもまた産地固有の味わいが楽しめる。このプロジェクトをきっかけに、今度は種から藍を育てて、作品を染めようということになって楢葉町で苗を植えた。その余った苗を自分でも持ち帰って、工房の庭に畑を作って苗を移植して大切に育てている。産地と共に藍を育てる喜びを感じながら、それがどう染まって作品となっていくかが楽しみだという。

 

工房の庭で育てている藍

 

誰でもガラス工芸を

楽しんで欲しい

最後にメッセージをお願いすると、「私の作品を通して、ガラス工芸に一人でも多くの人に興味を持ってもらえるとうれしいです。そして、大きな道具がなくても、自分でも楽しみながらガラスが彫れるということを知って欲しいですね」とのこと。

そのために文京区伝統工芸会のワークショップで行っているのが、ギヤマン彫りと鳥海さんが呼んでいる江戸時代からあるガラスの手彫り。ガラス表面にガラス用の彫刻ペンで自由に絵を刻んで描く技法で、ガラスは百均で売っているような小物でいいし、先にダイヤモンドの粉末が付いた彫刻ペンも安価に手に入るので、実はガラス工芸は誰でも手軽に楽しむことができるものだという。

「江戸を感じながら、ガラス工芸を体験してくれたらいいな」と、鳥海さんは微笑んだ。

ギヤマン彫り

 

 

鳥海 友理

Nijiirosketch 主宰。東京都生まれ埼玉県育ち。女子美術大学で建築を 学び、卒業後は内装大工や家具作りの仕事を経て、ガラス職人へ転身。 Nijiirosketch として創作活動をしている。サンドブラストによる記念品やグラ スの彫刻をはじめ、吹きガラス、バーナーワーク、キルンワークなど、多彩 な技法を駆使し、心躍るガラス作品を創作している。

所在地:文京区音羽
問い合わせ先:https://nijiirosketch.com/