Craftsman来て見て体験演者

その前に立つ人を引き立てる
光り輝く金屏風を貼る
湯本 真司
金屏風師

湯本 真司

金屏風は、金箔または金紙を全面に貼った日本の屏風で、室内装飾・儀礼・美術の三つの役割を併せ持つ伝統的調度品といわれています。湯本真司さんは、屏風制作や表具修理を専門とする職人で、特に金屏風の制作・修復で評価が高く、婚礼や式典、舞台・展示の背景など、格式が求められる場面に用いられる仕事を手がけてきました。室町期に空間装置としての必然性が生まれ、桃山期に美の完成度が高まったともいわれている金屏風。近年手がける職人も少なくなった伝統のものづくりを継承しています。


金屏風の仕事とその材料

湯本さんの仕事は、金屏風を主に扱っており、ホテルや式場関係の金屏風を制作している。その他に、一般の表具屋さんとしても障子や襖の制作や修理を行っている。

湯本さんが手がける金屏風は、大きなもので、高さが八尺(2400ミリ)で六曲。1曲(750ミリ)を6面つないでいる。

この日、工房にあった大きな屏風は洋金平押し。箔を押して八尺の一枚にした金紙にコーティングがかかっているので、汚れても拭くことができるという。昔の素材は、コーティングされていなかったので、染みになってしまってだめだったそうだ。

洋金平押し以外だと、裏箔がある。「写真を撮った時に、光ってハレーションを起こすのを防ぐために表面に絹をかぶせてつや消しにしている金紙です。今は、洋金平押しと裏箔の2種類が一般的です」という。

制作期間は、乾きの時間が必要なので、だいたい1か月くらいかかるとのこと。作業の手順は、「金紙を貼る最初の土台は、骨縁屋さんから仕入れてきます。障子の桟を想像してもらえればいいのですが、これが中身になって、下張りをしていきます。和紙を最初3枚貼って、その上に2枚袋貼りをします。袋貼りとは、骨縁にべたっと貼るのではなく、和紙を袋状にして、真ん中がふっくらとした感じで貼る技法です。その上に金紙を上張りします」

一番難しいのは、金紙が折れると跡がついてしまうので、折れないように貼ることである。一回でも折れてしまうと、修復は不可能。一人前になるのは、やはり十年くらいはかかるという。ただ、気温とか湿度で中の骨が動いてしまい、隅皺といって隅がたるんでしまうこともあるそうだ。「ホテルさんは暖房が強いので、水分が抜けて木が痩せてしまい、隅皺になってしまうこともあります」というように、納品して何日も経ってから、皺になるものは、防ぎようがない。

「目が空いていると骨が収縮してしまうので、なるべく詰まっているいい木を使うしかない。骨縁屋さんは、以前は東京にもあったのですが、今は和歌山に発注しています。やはり木は杉です。だんだん、いい素材も手に入らなくなってきていて、木の目がつまっているほど値段も高くなるので、そのバランスも難しいですね」

骨縁

塗師屋から屏風屋に

匠の領域を広げる

「うちは、もともと塗師屋(ぬしや)でした」という湯本さん。「祖父が塗師屋をやっていて、それが始まりです。親父が後を継いで、屏風の方も親父が始めたんですよ。職人さんも何人か雇っていました。自分は高校を出て、5年間浅草の佐久間大樹堂で修行して、屏風師になった。その後、家を手伝いながら屏風の仕事を始めたのです」

屏風師を志したきっかけを聞くと、「自分は昔から親の仕事は継ごうと思っていました。屏風の縁も塗師屋が塗るのですが、塗師屋の仕事も減っているので、屏風職人になろうと思ったのです」とのこと。そうすれば塗師もできるし、屏風も作れると考えてのことだった。

もともとは、文京区で制作していたが、八尺の高さになると区内では立てて作業するのが難しくなり、工房は足立区に移転したのだそうだ。「昔は、もっと低いのが主流だったのですが、日本人も背が高くなって屏風の背も高くなっているのです」という。

「北は北海道、南は沖縄まで全国から発注があります。あとは外国の大使館や外務省からも注文を受けることがあります。自分も海外へ販路が広がることを期待しています」という。

下地貼りの作業

金紙のカット作業

折れないように息を合わせて金紙を持ち上げる。

神経を研ぎ澄まして金地を貼る

金屏風の魅力を

多くの人に再認識してほしい

金屏風の魅力を伺うと、「人の後ろに立つものなので、それそのものは目立たずに、前に立っている人を目立たせるものです。ただ、ないと寂しい。屏風が置いてあるのとないのでは、場の空気が全く違ったものになる」とのこと。圧倒的な存在感がありながら、決して出しゃばらないところに惹かれるという。

「世の中ではだいぶ使われなくなってきました。昔は、学校にもあって、入学式とか卒業式にありましたからね」と憂いてもいる。「でも地方だとまだあるんですよ。送ったりしてますから」とも。

これからの方向性を聞くと、「メインは金屏風ですが、今後は一般の家庭に置いてもらえるようなインテリアアートとしての小品も展開していこうと思っています」とのこと。今までは、一般用消費者用の商品は展開してこなかったので、絵師に頼んで絵付けをしてもらった「小さな襖絵」シリーズなどの商品を展開していくそうだ。

「世の中に金屏風がまた見直されることを期待して、それまで頑張ろうかなと思っています」と、湯本さんは言っていた。

兄の悟史さんと

湯本 真司

1975年、文京区本郷で、漆工の湯本重行氏(平成17年度文の京技能名匠者認定)の次男として生まれる。誠之小、文京二中(現本郷台中)卒。高校卒業後は、浅草の佐久間太煕堂で5年間修行を積み、家業の(有)ユモト工芸に入り、現在に至る。平成29年度文の京技能名匠者認定

所在地:(有)ユモト工芸:文京区本郷 工房:足立区
問い合わせ先:(有)ユモト工芸