Craftsman来て見て体験演者

愛してやまない鳥の姿を
シルバージュエリーで細密に表現
岡内 太郎
鳥ジュエリー作家

岡内 太郎

一級貴金属装身具技能士の岡内太郎さんは、シルバー製の鳥のアクセサリーを「鳥造(TORIZO)」というブランド名で展開している。野鳥写真家として世界各地を旅してきた確かな観察眼を背景に、羽毛一枚一枚の表情まで彫り込むその細密な技巧は、鳥を愛してやまない人々を強く惹きつけている。大自然への畏敬の念と、野生生物への優しいまなざし。 岡内さんの作品には、それらが生き生きとしたフォルムと、シルバーならではの凛とした輝きとなって息づいている。


羽毛のテクスチャーをリアルに表現

岡内さんが手がけるジュエリーは、指輪、ペンダント、ブローチなど多岐にわたる。素材には、造形表現と耐久性を兼ね備えたスターリングシルバー(Silver925)を主に使用している。

鳥造の最大の特徴は、表面のテクスチャー表現にある。一般的なシルバージュエリーが鏡面仕上げで輝きを強調するのに対し、岡内さんは“磨く”代わりに、全身を羽毛で覆うように彫り込んでいく。羽の重なりや柔らかさ、生きている鳥特有の気配を、彫りによる陰影で金属の中に宿らせるのだ。「いわゆる“鳥っぽい”デザインではなく、カワセミやハシブトカラス、コマドリといった、鳥種ごとの特徴をきちんと表現したいんです」。そう語る岡内さんの作品は、百貨店の催事や鳥をテーマにしたイベントなどで発表・販売されている。

近年は、18金による刺しメッキや、UVレジンを用いた彩色にも取り組み、鳥が持つ本来のカラフルさや生命感を、金属表現の中でさらに深化させている。 

彩色したカワセミ(Silver925/サファイア)

 

 

 

 

 

自然界の鳥にこだわる理由

小学生の頃からバードウォッチングが好きで、野鳥の写真を撮り続けてきた岡内さん。卒業文集には「大きくなったら野鳥の仕事がしたい」と書いていたという。実家は代々続く貴金属加工業。祖父の代には帯留めなどの和装小物を、父の代にはバックルやカフス、ブローチ、ペンダントなどを手がけてきた。しかし岡内さんは、「自分の代では、本当に好きなものを作りたい」と考えるようになる。

幼少期は蝶の採集や海水魚に夢中だったが、森の中でアカゲラが木をつつく映像を見たことをきっかけに、鳥の世界に惹き込まれた。そして実際に出会ったカワセミ。その鮮烈な姿が、決定的な転機となる。「羽毛のふわっとした質感、羽を広げたときのシンメトリーな美しさ、そして色彩。『かわいい』というより、『美しい』存在なんです」

鳥の話になると止まらない。その眼差しには、長年育まれてきた深い愛情がにじむ。

確かな技術を携え、鳥の世界へ

幼い頃、実家の三階はすべて仕事場で、住み込みの職人が何人も働いていたという。一時は日本画家を志した時期もあったが、父の勧めで師匠のもとに修行に出され、厳しい環境の中で技術を磨いた。6年間の修行後、外注仕事を経て家業に戻る。

趣味のダイビング仲間から頼まれたイルカの指輪が好評を得たことをきっかけに、動物モチーフの制作が広がり、やがて鳥の世界へと収斂していった。

現在もデザイン画は描かず、参考資料に頼ることもほとんどない。頭の中にある鳥の姿を、そのまま金属に彫り込んでいく。「もっと羽一枚一枚を正確に表現したいし、自在置物のように動く鳥も作ってみたいですね」イベントでの鳥好きとの交流、そして野生の鳥との新たな出会いが、次の作品を生む原動力だ。

ワックスを彫って原型を作る

鋳物屋さんから上がってきた鋳物を研く

彫り

ろう付け

メッキ、洗浄

 

 

「妻の還暦祝いで、コスタリカに行きたいんです。ハチドリがたくさんいますから」

確かな技術と尽きることのない探究心。岡内太郎さんの手から生まれる鳥たちは、今日も静かに羽ばたいている。

自分で撮影したヤイロチョウの写真を手に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

岡内 太郎

1968年、東京都文京区生まれ。
1988年、(株)石貴に入社し、「現代の名工」石井比功次氏に師事。
1992年、二級貴金属装身具技能士取得。1995年独立。
1996年、東京都知事賞受賞(第72回東京都・東京貴金属工芸品工業協同組合共催コンクール)。
一級貴金属装身具技能士取得、東京都青年優秀技能者表彰。
2011年 文京区技能名匠者、2014年 東京マイスター、2016年 厚生労働省ものづくりマイスター認定。
2020年より鳥イベントを中心に本格的に活動。

所在地:文京区在住/アトリエ:東京都北区西ヶ原
問い合わせ先:https://torizzotorizo.wixsite.com/torizo